片麻痺(半身の麻痺)がある人の着替えには、合言葉があります。
「脱健着患(だっけんちゃっかん)」——脱ぐときは健側(動く方)から、着るときは患側(麻痺のある方)から。
この記事では、脱健着患のやり方と、わが家が介護用の服を買って遠回りした話(結局、普通のTシャツに戻りました)を書きます。
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脱健着患とは|なぜその順番なのか
理由は単純で、動く腕は多少無理がきくけれど、麻痺した腕は無理がきかないからです。
- 脱ぐとき:先に健側(動く方)の袖を抜きます。すると服全体がゆるゆるになるので、麻痺した腕は引っ張らずにするっと抜けます
- 着るとき:先に患側(麻痺した方)の袖を通します。服がまだ全部フリーな状態なら、動かない腕にも無理なく袖を通せます。動く腕は最後でも自分で何とかなります
順番を逆にすると、麻痺した腕を無理にねじることになって、痛みや脱臼のもとになります。
「脱ぐのは健側から、着るのは患側から」。これだけは覚えておいて欲しいです。
本人が手伝おうとして、動く方の腕を先に出してくる
順番を知っていても、実際につまずくのはここでした。
着替えのとき、本人が自分から動く方(健側)の腕を袖に入れようとしてくれるんです。じっとしているわけではなく、ちゃんと手伝おうとしてくれている。
ありがたいのですが、その流れのまま健側から着せてしまうと、あとが大変です。
片方の袖が埋まると服にゆとりがなくなって、残った麻痺側の腕を通すときに、袖を引っ張ったり腕をねじったりすることになります。いちばん避けたい形です。
なので、動く方の腕が出てきても、そこはぐっとこらえて患側の袖が先。
「こっちねー」と声をかけて、麻痺のある側の袖から通します。
正直にいうと、先に健側を通してしまったときは、そのまま無理やり患側を通しています。ゆったりした服なので、着せられてしまうんです。(腕を痛がるときは、いったん脱がせてやり直したほうが確実です)
でも、そこでわちゃわちゃしている時間がいちばん危ない。
祖母は端座位(ベッドに座った姿勢)を長く保てないので、もたついているうちに体が傾いて、倒れていってしまいます。
順番を守るのは、麻痺した腕のためだけじゃありませんでした。着替えにかかる時間を短くするためでもあります。背もたれのない端座位でいられる時間には限りがあるので、やり直しの数十秒がけっこう効いてきます。
介護用の前開き服を買った。そして落とし穴
祖母が脳梗塞から退院するとき、わが家は「着替えさせやすいように」と、前開きでマジックテープ式の肌着と服を買いました。
たしかに、着替えそのものはさせやすい。でも、使ってみて分かった落とし穴がありました。
- 洗濯のあと、マジックテープのゲバゲバが他の服に引っ付く:外して整えるのが地味に手間です
- マジックテープを一つ一つ留めるのが手間:着替えのたびに、ペタペタペタ……
着替えの数分をラクにするための服が、洗濯と身支度のトータルでは手間を増やしていました。
今は「首元が大きめの、普通のTシャツ」です
結局、今のわが家は普通のTシャツに落ち着きました。選ぶ基準は2つだけ。
- 首元が大きめ(頭を通すときに引っかからない)
- ゆとりのあるサイズ感(脱健着患がやりやすい)
座って着替えができる人なら、これで十分です。介護用の服より安いし、どこでも買えるし、洗濯も普通にできる。見た目も「介護の服」ではなく、ただの服です。
使い分けの結論
- 座って着替えられる → 首元大きめ・ゆとりサイズの普通のTシャツで十分
- 寝たままの着替えが中心 → 前開きの方が楽。マジックテープのわずらわしさを考えると、ボタンやスナップ式も選択肢です
もし前開きのマジックテープ式を使うなら、洗濯のときにテープを留めてからネットに入れると、ゲバゲバが他の服に引っ付くのを防げます。
まとめ
- 着替えの合言葉は「脱健着患」。脱ぐのは健側から、着るのは患側から
- 介護用の前開き服は、着替えはラクでも洗濯と留める手間がある
- 座位がとれるなら、首元大きめ・ゆとりサイズの普通のTシャツで十分
- 寝たまま着替えるなら前開きが楽
※腕に痛みが出る場合や、関節が固くなっている(拘縮がある)場合は、無理をせず訪問看護師さんやリハビリの専門職に着せ方を相談してください。
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