褥瘡(床ずれ)予防に欠かせない体位変換。
でも、腕の力だけで身体を動かそうとすると、介護する側の腰にも負担がかかります。
看護師としての経験をもとに、本人の皮膚と介護する人の腰を守るための、身体の動かし方をまとめました。大切なのは、力任せに動かす前に、姿勢と環境を整えることです。
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動かす前に|ベッドの高さと身体の姿勢を整える
これからどちらに動くのかを伝え、痛みがないか確認します。深く前かがみにならずに済む高さに調整しましょう。足を無理のない幅で前後に開き、本人に近づいて、腰をひねらずに動ける位置に立ちます。
腕を胸の前にまとめ、無理のない範囲で膝を曲げるなど、身体をコンパクトにしてから動かすのもコツです。手足を広げたままより、身体とベッドの接地面積を小さくでき、寝返りの際に少ない力で動かしやすくなります。できる動きは本人に協力してもらい、曲がりにくい関節を無理に曲げないようにします。
横に滑らせる移動では、摩擦をどれだけ減らせるかが、そのまま必要な力の差になります。
身体をコンパクトにして接地面積を小さくするのも、スライディングシートを使うのも、どちらも摩擦を減らす工夫です。道具がなくても姿勢で減らせますし、シートがあればさらに減らせます。
横に移動するときのコツ|本人に近づき、手前に寄せる

ベッド上で身体を横に移動するときは、動かしたい側に回り、本人に近づいてから手前に寄せると、遠くへ手を伸ばす姿勢を避けやすくなります。身体の下に手を差し入れて支える場合も、皮膚をこすらず、無理に押し込まないことが大切です。腕や手首をつかんで引っ張るのではなく、本人の状態に合った支え方や用具を使います。
一度に身体全体を動かすのが難しい場合は、肩まわり・腰まわり・脚を少しずつ移し、位置をそろえる方法もあります。一か所だけ大きく動かすと身体がねじれるため、小さな移動を繰り返します。骨折や手術後など、動かし方に制限がある方には行わず、専門職に確認してください。
腕の力だけで引こうとせず、足を踏み替えたり重心を移したりして動きましょう。反対側に回るスペースがない場合や、一人では重いと感じる場合は、無理をせず、介助する人数や用具を見直します。
横向き(側臥位)にする手順

- 身体をコンパクトに整え、必要に応じて向く方向と逆側に寄せる:身体の整え方は前述のとおりです。たとえば右向きにするなら、横向きになったときに身体がベッドの中央付近に収まるよう、必要な分だけ左に寄せます。端ぎりぎりまで寄せないようにしましょう。
- 向く側に回り、肩甲骨まわりと骨盤を支えて、ゆっくり横向きにする:本人に声をかけ、できる範囲で一緒に動いてもらいます。腕を引っ張らず、上半身と骨盤の動きを合わせ、身体をねじらないようにします。
- 身体が中央付近にあるか確認し、クッションで支える:ベッドの端に身体が寄ったままだと、ずり落ちや転落につながることがあります。横向きにした後も位置を確認し、背中や膝の間などにクッションを入れて、無理なく保てる姿勢に整えます。
横向きにした後は、身体の位置と安定まで確認することが大切です。腕が身体の下に挟まっていないか、痛みや圧迫がないかも見ておきましょう。介助後はベッドを安全な高さに戻し、必要な柵や呼び出し手段も整えます。
ベッドの頭側へ移動するときは、頭側に回って引き寄せる

祖母がベッドの下の方へずれてしまったとき、私はベッドの横から上へ押し上げるのではなく、頭側に回って介助しています。
祖母の両脇あたりから手を入れて上背部を支え、自分の方へグッと引き寄せるようにすると、横から身体を上へ移動させるよりも少ない力で動かしやすいです。
もし、本人が膝を曲げられるなら、曲げてもらい、タイミングを合わせて足を踏ん張るように力を入れてもらうと、より軽い力で移動することができます。
最初は横から持ち上げるようにしていたこともありますが、これだと私自身の腰や腕にもかなり負担がかかりました。
頭側から引き寄せるようにしてからは、私の場合はこちらの方がずっと介助しやすく感じています。
ただし、身体の状態や麻痺の程度によって適した介助方法は変わります。無理に腕や脇を引っ張るのではなく、本人の身体の状態を見ながら行うことが大切です。
ベッドから起き上がるとき

- 身体の位置を整え、起きる側を向いて横向きになる:必要に応じて枕元への位置を調整してから、身体をねじらず横向きにします。
- 両脚をベッドの外へ下ろしながら、上半身を起こす:肩甲骨まわりから背中を支え、脚を下ろす動きと合わせて、弧を描くように介助します。首や腕を引っ張って起こさないようにします。
- 座った姿勢を支え、足が床や足台につくようにする:すぐに立たず、めまいや気分不良がないか確認します。座った姿勢が不安定な場合は、そばを離れず支えましょう。
脚を下ろす動きに合わせると、上半身を起こす負担を減らしやすくなります。本人が肘や手でベッドを押せる場合は、その力も活かしましょう。介護する人が上半身を丸ごと抱え上げる必要があるときは、電動ベッドの背上げ機能なども含め、介助方法を専門職に相談してください。
道具の話|わが家は使っていないけれど、使ってほしい
わが家では、スライディングシートを使っていません。祖母が小柄で、手でも無理なく動かせているからです。
ただ、これは体格の差で成り立っている話です。
職場では当たり前のように使っていたので、シートがあるとどれだけ楽かは知っています。自分と体格が近い人や、自分より大きい人を動かすなら、無理をするよりシートを使ってほしいと思います。
腰は一度痛めると、介護そのものが続けられなくなります。道具に頼るのは、手を抜くことではありません。
買う前に、一度ケアマネジャーさんに聞いてみてください。介護保険の福祉用具貸与で借りられることがあります。(要支援1・2と要介護1は原則として対象外ですが、例外が認められる場合もあります)
わが家も、エアマットは介護保険で借りています。
福祉用具のレンタルについてはこちらにまとめています。
▶福祉用具レンタルは月いくらで借りれる?車椅子要介護4の祖母
▶脳梗塞後にエアマットに替えた話|背中の赤みが消えた【介護保険レンタル】
まとめ|守るのは、祖母の皮膚と、私の腰
- 動かす前に、ベッドの高さと自分の立ち位置を整える。
- 腕や膝の位置を整え、身体をコンパクトにしてから動かす。
- 身体を滑らせる移動では、用具を使って摩擦を減らす。
- 横向きにした後は、身体がベッドの中央付近にあり、安定しているか確認する。
- 脇・首・腕を引っ張らず、本人ができる動きと用具を活かす。
介護を続けるためには、介護する側の身体も大切な資本です。「少ない力で動かす工夫」と「本人が安心して動ける工夫」を、どちらも大切にしていきたいですね。
体位変換とセットで読んでほしい記事はこちら。
▶在宅介護で防ぎたい3大トラブル|誤嚥性肺炎・尿路感染・褥瘡の予防まとめ
▶在宅介護のクッションの当て方|褥瘡・拘縮・浮腫を防ぐポジショニング【看護師解説】
この記事は看護師としての経験と一般的な知識に基づくものです。麻痺や拘縮、骨粗しょう症、骨折・手術の既往などがある方は、身体の状態によって適した方法が異なります。
痛みがある場合は無理に動かさず、訪問看護師さんやリハビリの専門職に相談してください。
参考にした資料

