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「やめて」が通じない|認知症の祖母と暮らして分かったこと

「やめて」が通じない 認知症の祖母との暮らしで分かったこと 介護の日々のこと
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何度言っても、また同じことをする。

分かっていても、私はイライラしました。

祖母と暮らしていて、しんどかったことのひとつが、「やめて」と言っても同じ行動を繰り返すことでした。

火にかけているやかんに手を出そうとする。

炊飯中の炊飯器を開けようとする。

そのたびに止めて、

「危ないから、やめてね」

と説明します。

祖母は「うん」と答え、その場ではやめてくれました。

でも、少しすると、また同じことをします。

私は最初、伝え方の問題だと思っていました。

もっと優しく言えば伝わるかもしれない。

理由をきちんと説明すれば、分かってくれるかもしれない。

何度もそう考えました。

でも、祖母の場合は、言い方を変えるだけでは解決しませんでした。

 

祖母の在宅介護は、第一子が生まれた2019年から。いまは子ども3人を育てながら続けています(要介護1→現在は要介護4)。看護師として、2013年から2026年3月まで総合病院で働いていました。この記事は、その体験をもとに書いています。
▶プロフィール

その場では、分かっていた

祖母は、私の話をまったく理解していなかったわけではありません。

「危ないから触らないでね」

と伝えると、その場では「うん」と答えて、手を止めます。

だから私は、

「今、分かったって言ったよね」

「さっき説明したばかりだよね」

と思っていました。

何度も繰り返されるうちに、だんだん声が強くなりました。

でも祖母にとっては、さっき注意されたこと自体が、記憶に残っていなかったのだと思います。

認知症では、新しい出来事を覚えることが難しくなり、同じ質問や行動を繰り返すことがあります。

もちろん、認知症の症状や程度は人によって違います。

祖母の場合は、その場では理解できても、伝えられた内容を覚えておくことができませんでした。

そのため、祖母にとっては、そのたびに初めて注意されたようなものだったのだと思います。

▶ 認知症の方と関わるときに大切なポイント|国立長寿医療研究センター

分かっても、イライラはなくならなかった

「わざとやっているわけではない」

「伝えたことを忘れてしまうのは、認知症の症状」

頭では分かっていました。

それでも、同じことが何度も起きれば、しんどいものはしんどいです。

火にかけたやかんに手を出されれば、やけどをしないか心配になります。

炊飯器を開けられれば、食事の準備が止まります。

子どもが泣いているときも、祖母が危ないことをしていないか気にしなければなりません。

理由を理解できたからといって、毎回穏やかに対応できるようになったわけではありません。

「またか」

「どうして分かってくれないの」

そう思いました。

実際に、祖母に怒鳴ってしまったこともあります。
▶ 限界だった私は、祖母に怒鳴ったことすらちゃんと覚えていない

言い聞かせるより、起きにくくする

少しずつ、私は考え方を変えました。

何度も「やめて」と言って覚えてもらうのではなく、同じことが起きにくいようにする。

使っていないやかんは片付ける。

炊飯器などの家電は、使わないときはコードを抜く。

触ってほしくないものは、見えない場所へ移す。

食べ物のストックも、祖母から見えない場所へ置く。

言葉だけで止めるのではなく、触れないようにする方法へ変えていきました。

そのうち、私自身も食べるものがなくなり、食事を後回しにするようになりました。

気づいたときには、産前より体重が5キロ減っていました。

家の外へ頼ることも必要だった

家の中だけで対応することにも、限界がありました。

祖母がデイサービスへ行っている時間は、祖母の行動を気にしなくてもいい時間でした。

ただ、その間は子どもの世話や家事があり、私が十分に休めていたわけではありません。

当時の私は、ショートステイを使うことに抵抗がありました。

自分が楽をするために祖母を預けるようで、逃げている気がしていたからです。

その後、ショートステイを利用するようになり、初めて祖母と一晩以上離れる時間ができました。

祖母と離れることで、気持ちを少し落ち着かせることができました。

▶ ショートステイを初めて使った日|罪悪感と、楽さと、「おかえり」と思えるまで

「やめて」が通じないとき、言葉だけで解決しようとしない

認知症のある人への伝え方を工夫することは大切です。

短く、具体的に伝える。

一度にいくつも言わない。

怒らず、急かさずに話す。

そうした関わり方で、落ち着くこともあります。

でも、それを家族が毎回できるとは限りません。

伝え方を変えても同じことが続く場合は、言葉だけで止めようとせず、

  • 危ない物を移動する
  • 鍵やゲートを使う
  • 見守る人を増やす
  • デイサービスやショートステイを利用する
  • 起きていることをケアマネジャーに具体的に伝える

といった方法も必要です。

相談するときは、

「認知症の対応が大変です」

だけではなく、

「炊飯中の炊飯器を何度も開ける」

「火にかけたやかんへ手を伸ばす」

「言葉で止めても、すぐ同じことを繰り返す」

と具体的に伝えたほうが、困っている状況を理解してもらいやすくなります。

分かっていても、つらいものはつらかった

祖母は、私を困らせるために同じことをしていたわけではありません。

私の説明が下手だったからでもありませんでした。

それでも、一日中同じ対応を繰り返す生活はつらいものでした。

「認知症だから仕方ない」と理解することと、穏やかに対応し続けられることは別です。

わが家では、言い聞かせて止めようとするだけでは続きませんでした。

隠す。

移動する。

区切る。

人やサービスに任せて、離れる。

そのように、同じことが起きにくい状態を作るほうへ変えていきました。

同じ時期の生活全体については、こちらに書いています。

▶ 動ける認知症が一番つらかった|在宅介護でしんどかった時期の話

▶家の中が落ち着かない|認知症の祖母と暮らして変わってしまった日常

▶ 「なめていた私のダブルケア」体験記・全13話