わが家は、祖母との同居に合わせて新築を建てました。そこから7年、その家で在宅介護を続けています。
家を建てるときに、祖母との暮らしを考えてやっておいたことがあります。
一方で、実際に介護が始まってから、「ここは、もう少し考えておけばよかった」と思ったこともあります。
祖母が歩いていた頃と、車椅子になった今とでは、使いやすい間取りも変わりました。
この記事では、新築時にやっておいてよかったこと、住んでから気づいたこと、骨折後に取り付けた手すりと介護保険の住宅改修費についてまとめます。
すべての家や身体状況に当てはまる正解ではありません。祖母と7年間暮らしてきた、わが家の場合として読んでもらえたらと思います。
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新築のときにやっておいてよかったこと
家を建てるときから付けていたのが、廊下の手すりです。

祖母と同居することを前提にした家だったため、廊下には最初から手すりを付けてもらいました。
同居を始めた頃の祖母は、自分で歩くことができました。その後、転倒や骨折を経験し、少しずつ歩くことが難しくなっていきました。
歩けていた頃は、廊下の手すりにつかまりながら移動していました。今は車椅子になりましたが、最初から付けておいてよかったと思っています。
ただ、家を建てた時点で、今の祖母の状態まで想像できていたわけではありません。
介護のために考えて建てた家でも、実際の介護は想定どおりにはいきませんでした。
7年暮らして分かった、介護しやすい間取りのポイント
ここからは、わが家でできていることと、住んでから気づいたことをまとめます。
① スロープは、あとから置けるスペースを確保する

わが家では、玄関に造り付けのスロープは作りませんでした。
祖母が車椅子になってから、必要なときだけ設置できる介護用スロープをレンタルしています。結果として、わが家はこの方法で困っていません。
造り付けにしなかったことで、祖母が歩いていた時期は玄関を広く使えました。車椅子になってから、そのときの状態に合うスロープを選ぶこともできました。
ただし、玄関に造り付けのスロープが不要という意味ではありません。
家の敷地や玄関の高さ、介助する人の有無によっては、最初から緩やかなスロープを作ったほうが使いやすい場合もあります。
大切だと思ったのは、あとからスロープを置けるだけの広さを残しておくことです。
わが家では、次の2か所にスロープを使っています。
- 玄関の上がり框(段差1段)には、長さ100cmのタイプ
- 玄関ポーチ(階段3段)には、長さ200cmのタイプ
車椅子のためにレンタルしたものですが、ベビーカーを家の中へ入れるときにも便利でした。
適したスロープの長さや傾斜は、段差の高さや、車椅子を自走するか介助者が押すかによって変わります。
わが家と同じ段数でも、同じ長さが合うとは限りません。選ぶときは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に、実際の玄関を見てもらうのが安心です。
▶わが家で使っているケアスロープはこちら
② トイレは、便器の向きと介助スペースを考える
ここは、わが家の後悔ポイントです。
設計のとき、設計士さんからは、ドアに対して便器を並行に置く配置を提案されました。

でも、ほかの部屋との兼ね合いで、わが家はドアの正面に便器がある配置を選びました。
介護が始まってから、提案されたとおりにしておけばよかったと思っています。
便器がドアの正面にあると、介助する人が横に立つスペースを取りにくくなります。
並行に配置されていれば、便器の横に立って、体を支えながら座らせることができます。
ただし、使いやすい向きは、本人の麻痺のある側や立ち上がり方によっても変わります。
便器の向きだけでなく、次の点も一緒に考えておくとよかったと思います。
- 車椅子をトイレの近くまで寄せられるか
- 介助する人が横に立てるか
- ドアを開けたときに車椅子や介助者の邪魔にならないか
- 手すりを取り付ける壁や下地があるか
- 廊下からトイレまで段差なく移動できるか
開き戸より引き戸のほうが使いやすいこともあります。
新築やリフォームの図面を見るときは、便器だけではなく、車椅子と介助者も書き込んでみると想像しやすくなります。
③ 廊下は、幅だけでなくドアと曲がり角も確認する
わが家は、メーターモジュールで建てています。一般的な尺モジュールより廊下を広く取りやすく、車椅子で移動するようになってから、この差を実感しました。
ただし、実際に通れる幅は、壁の厚さや手すり、ドア枠などによって変わります。「メーターモジュールだから大丈夫」とは限りません。
特に確認しておきたいのは、次の場所です。
- 廊下の有効幅
- 部屋やトイレの入口
- 廊下の曲がり角
- 車椅子の向きを変える場所
- 手すりを取り付けたあとの幅
車椅子は、まっすぐ進むだけなら通れても、曲がる場所で動けなくなることがあります。
図面上の廊下幅だけでなく、実際に使える幅と、曲がるためのスペースを見ることが大切だと思います。
④ 車椅子になった場合の動線を考える
祖母が歩いていた頃は、家の中の小さな段差や曲がり角を、そこまで気にしていませんでした。
車椅子になった途端、家の中の「通りにくい場所」が見えるようになりました。
考えておきたいのは、日常的に使う場所をつなぐ動線です。
- 玄関から祖母の部屋
- 祖母の部屋からトイレ
- 祖母の部屋からリビング
- 祖母の部屋から浴室
- ベッドから車椅子へ移乗する場所
通路の幅だけでなく、家具を置いたあとも車椅子が通れるかを考える必要があります。
わが家も、家を建てたときは通れると思っていた場所が、実際に車椅子を使ってみると狭く感じることがありました。
⑤ 介護する場所と家族の生活空間を分ける
わが家では、祖母の部屋を玄関のすぐ近くにしています。玄関から祖母の部屋、その奥にリビングや家族の寝室があります。
この配置にしてよかったことは、主に3つあります。
- 通院やデイサービスの送迎で、外までの移動が短い
- 送迎スタッフや訪問看護師さんが、家族の生活空間をあまり通らずに祖母の部屋へ行ける
- 祖母の空間と家族の空間を分けやすい
介護は、家に外の人が出入りする暮らしでもあります。
ケアマネジャー、デイサービスの送迎スタッフ、訪問看護師、訪問診療の医師など、いろいろな人が家に来ます。
祖母の部屋が玄関に近いことで、家族のリビングや寝室を通らずに入ってもらえることは、想像していた以上に助かりました。
介護される人の動きやすさだけでなく、そこで暮らす家族の生活を守ることも、間取りを考えるうえで大切だと思います。
骨折後、玄関に縦の手すりを取り付けた

祖母が大腿骨頸部骨折をしてから、玄関の段差を上り下りすることが難しくなりました。そこで、上がり框の近くに縦の手すりを後付けしました。
縦の手すりは、立ち上がるときや段差を越えるときに、握る位置を変えながら体を支えられます。祖母の場合は、この手すりがあることで玄関の上り下りを介助しやすくなりました。
ただし、使いやすい手すりの向きや高さは、本人の身長、麻痺、関節の動き、立ち上がり方によって変わります。取り付ける前に、ケアマネジャーや理学療法士・作業療法士、住宅改修に慣れた業者へ相談することをおすすめします。
工事は、家を建てたハウスメーカーにお願いしました。何年も前で記録が残っていないため正確ではありませんが、費用は10万円ほどだったと記憶しています。
正直に言うと、手すり1本の工事としては高かったと思っています。
ハウスメーカーに依頼した安心感はありましたが、今ならケアマネジャーに住宅改修に慣れた業者を紹介してもらい、複数の見積もりを比べてから決めます。
手すりの後付けに介護保険の住宅改修費を使った
玄関の手すりを取り付けたとき、介護保険の「居宅介護住宅改修費」を利用しました。要支援・要介護認定を受けている人が、現在住んでいる家を改修するときに使える制度です。
対象になる主な工事は、次のとおりです。
- 手すりの取り付け
- 段差の解消
- 滑りにくい床材などへの変更
- 開き戸から引き戸などへの扉の取り替え
- 和式便器から洋式便器などへの取り替え
- これらの工事に伴って必要になる工事
「20万円の補助がもらえる」と説明されることがありますが、正確には、対象となる工事費の支給限度基準額が20万円です。
20万円までの対象工事に対して介護保険から7〜9割が支給され、本人は負担割合に応じて1〜3割を負担します。祖母は1割負担だったため、対象になった工事費の9割が後から戻ってきました。
20万円を超えた部分は、全額自己負担です。
また、原則として同じ人・同じ住宅につき、生涯で20万円までです。ただし、転居した場合や、要介護状態区分が3段階以上上がった場合には、改めて20万円まで利用できます。
なお、新築そのものは介護保険の住宅改修費の対象になりません。わが家も、新築時から取り付けていた廊下の手すりではなく、祖母の骨折後に追加した玄関の手すりで制度を利用しました。
住宅改修費は、工事前の申請が必要
介護保険の住宅改修費で、一番注意したいのが申請のタイミングです。
原則として、工事を始める前に市区町村への申請が必要です。
基本的な流れは次のようになります。
- ケアマネジャーなどに相談する
- 施工業者を選び、見積もりを取る
- 改修が必要な理由書や工事前の写真などを準備する
- 工事前に市区町村へ申請する
- 市区町村の確認後に工事を行う
- 工事後の写真、領収書、工事費の内訳書などを提出する
- 住宅改修費が支給される
当時は、ケアマネジャーや業者に手伝ってもらった部分も多く、細かい手続きまでは覚えていません。
私が自分でやったことで覚えているのは、設置前と設置後の写真を用意したこと、領収書を受け取ったこと、役所で書類を提出したことです。手続きそのものを難しいとは感じませんでした。
ただし、工事を先に始めてしまうと、介護保険の対象にならないことがあります。
手すりを付けたいと思ったら、業者へ工事を頼む前に、まずケアマネジャーか市区町村の介護保険担当窓口へ相談してください。
介護を想定して家を建てても、すべては予想できない
家を建てる前から介護のことを考えておくと、あとで助かることはあります。わが家では、廊下の手すり、広めの通路、玄関に近い祖母の部屋が役立ちました。
一方で、祖母がいつ車椅子になるか、どちら側に麻痺が残るか、どこに手すりが必要になるかまでは予想できませんでした。
すべてを新築時に完成させようとしなくてもいいのだと思います。あとから状態に合わせて、福祉用具のレンタルや住宅改修を使う方法もあります。
家を建てるときに大切なのは、介護設備を最初から全部付けることより、あとから変更できる余白を残しておくことなのかもしれません。
まとめ|わが家で役立った間取りと工夫
- 廊下の手すりは、祖母が歩けていた頃に役立った
- 玄関には、あとからスロープを置けるスペースがあると使いやすい
- トイレは便器の向きだけでなく、介助者と車椅子のスペースも考える
- 廊下は幅に加えて、入口や曲がり角も確認する
- 祖母の部屋を玄関近くにしたことで、送迎や訪問サービスを受けやすかった
- 手すりの後付けには、介護保険の住宅改修費を利用できる場合がある
- 住宅改修費は、原則として工事前の申請が必要
最後に、わが家らしい話をひとつ。
祖母が車椅子になった今、廊下の手すりも玄関の手すりも、子どもたちがお猿さんのようにぶら下がる遊び場になっています。
祖母を支えるために付けたものが、子どもの目には遊具に見える。
介護と子育てが一緒にある家は、たぶんこういう家なのだと思います。
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この記事の制度情報は2026年7月時点のものです。
住宅改修費の支給は、対象となる工事や手続きの流れが自治体によって異なります。必ず担当のケアマネジャーか、お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。

