なめていた私のダブルケア 第12話
ー子育てと在宅介護が同時に始まった、私のダブルケアの記録ー
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祖母の退院日を、みんなで楽しみに待っていた。
カレンダーに
「ばあちゃん たいいん」
と書いて、
子どもたちと
「あと◯日だね。」
と数えていた。
退院前日には、ベッドやスロープが届いた。
そして、また今までのように
トランポリンが始まった。
遊んでいたのは、真ん中の子だけだった。
上の子は遊ばなかった。
「壊れちゃうといけないから」と言って。
いつの間にか、
少し成長していた。
退院当日。
「ばあちゃん迎えに行ってくるね。」
そう言って、子どもたちを園に預けた。
夫も仕事を休んで、
赤ちゃんを見ていてくれた。
病院へ行くと、
祖母はぼーっとしていた。
表情は、あまり変わらない。
私だけが、
そわそわしているようだった。
「家に帰るよ。」
「楽しみだね。」
いろいろ声をかけてみる。
表情は変わらないけれど、
祖母は小さく頷いた。
入院中に伸びきった髪を切った。
目やにを取って、
手を拭いて、
爪を切った。
その日は、
ケアマネさんや
これからお世話になる訪問診療の先生も来て、
家の中は少しバタバタしていた。
気づけば、もう園のお迎えの時間だった。
子どもたちを迎えに行くと、
開口一番に聞かれた。
「ばあちゃん帰ってきた?」
「うん。
家で休んでいるよ。」
家につくと真ん中の子が大きな声で
「ばあちゃん!ばあちゃーん!」
返事はなかった。
「ばあちゃん、声出るようになるといいね。」
無理だと思う。
そうは言えず、
「そうだね。」とだけ答えた。
もう声は聞けないものだと思っていた。
だから――
その日は、
とてもびっくりしたんだ。
この記事は「なめていた私のダブルケア」第12話です。
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13|だって今、私たちは幸せだから
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