12|祖母が帰ってきた日

ダブルケア体験記 祖母が帰ってきた日 なめていた私のダブルケア【体験記】

なめていた私のダブルケア 第12話
ー子育てと在宅介護が同時に始まった、私のダブルケアの記録ー


祖母が脳梗塞で入院して、もうすぐ半年になろうとしていた。
退院日を、みんなで楽しみに待っていた。

カレンダーに
「ばあちゃん たいいん」
と大きく書いて、

子どもたちと
「あと◯日だね。」
と数えていた。

退院前日には、ベッドやスロープが届いた。

そして、また今までのように
ベッドがトランポリンになり、祖母の部屋が遊び場になった。

ただ遊んでいたのは、真ん中の子だけだった。

上の子は「壊れちゃうといけないから」と言って見ているだけで遊ばなかった。

いつの間にか、子どもたちは少し成長していた。

退院当日。

「ばあちゃん迎えに行ってくるね。」

そう言って、子どもたちを園に預けた。

夫も仕事を休んで、
生後4ヶ月になった末っ子を見てくれた。

病院へ行くと、祖母はぼーっとしていた。
表情は、あまり変わらない。

私だけが、そわそわしているようだった。

「家に帰るよ。」
「楽しみだね。」

車の中で、いろいろ声をかけてみる。

祖母の表情は変わらないけれど、
小さく頷いたように見えた。

家に帰って、入院中に伸びきった髪を切った。
タオルで目やにを取って、手を拭いて、爪を切った。

入院前のばあちゃんに少しでも近づけたい気持ちだった。


ケアマネさんや訪問診療の先生も来て、慌ただしく時間が過ぎていく。
気づけば、もう園のお迎えの時間だった。

子どもたちを迎えに行くと、
開口一番に聞かれた。

「ばあちゃん帰ってきた?」

 「うん。家で休んでいるよ。」

家につくと真ん中の子が大きな声で
「ばあちゃん!ばあちゃーん!」と声をかけた。

でも返事はなかった。

「ばあちゃん、声出るようになるといいね。」

…無理だと思うな。

そうは言えず、
 「そうだね。」とだけ答えた。

その時の私は、もう祖母の声は聞けないものだと思っていた。

だから――

その日は、本当にびっくりした。


この記事は「なめていた私のダブルケア」第12話です。

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