3|食べ続ける祖母と、止める私

ダブルケア体験記 食べ続ける祖母と止める私 ダブルケア

 なめていた私のダブルケア 第3話
ー子育てと在宅介護が同時に始まった、私のダブルケアの記録ー
シリーズ一覧▶なめていた私のダブルケア


祖母は、自分のことを少食だと思っている。

「私はそんなに食べられん。」

そう言う。

だから、ちょっと小腹がすいて、
ちょっとだけ何かを口にしたいだけなのだ。

ただ、食べた記憶はすぐになくなる。

そしてまた聞く。

「ちょっと食べるものないか?」
「飴とかでいいから。」
「ちょっと小腹がすいた。」

何度も言われる。

一度にたくさん出すと、
「こんなにも食べられん。」と言う。

でも、同じ量をこまめに出せば、全部食べる。

その一つ一つを、赤ちゃんを抱っこしながら用意する。

それが、地味に、疲れた。


祖母は私の母を育て、私たち孫も育てた育児のベテランだ。

子どもの面倒を見てくれたら、
認知症予防にもなるし、祖母孝行にもなる。
私は少し楽ができる。

すばらしい循環だと思っていた。

浅はかだった。

私、赤ちゃん抱っこしていて大変そうに見えない?
空気を読んでくれ、とさえ思った。

飴を大量に買った。

蓋つきのボックスに入れた。
これで、いちいち聞かれなくて済むと思った。

最初は「飴はないか。」と聞いていた。
そのうち、何も言わずに食べるようになった。

ただ、すごい頻度で食べる。

一日に三袋なくなることもあった。

蓋を開ける音。
閉める音。

その小さな音に、体が反応するようになった。

飴代も馬鹿にならない。

補充しながら、ふと思う。

この、記憶に残らない飴は、なんのためにあるんだろう。


夏。

ファミリーパックのアイスを冷凍庫に入れたまま寝た。

朝、リビングに祖母が立っていた。

失便していた。

ズボンとパンツを脱ぎ、
下痢便が床に広がっていた。

自分で処理しようとしたのだと思う。

冷凍庫を見ると、
残り五個あったはずのアイスは、一つもなかった。

冷蔵庫にストックを置けなくなった。

子ども用のドアロックをつけた。

力技で突破された。

食べ物の問題は、新居になってからも続いた。

野菜室にあったはずのトマトが消えた。
祖母の部屋のゴミ箱には、歯型のついたトマト。

冷凍庫を開ける祖母を見ていたら、
冷凍のからあげを出し、一口かじり
食べられないので、そのまま袋の中に戻していた。

私は、食べさせる人ではなくなった。

止める人になった。

「もう食べたよ。」
「それは明日の分。」
「これは子どものだからダメ。」

祖母は悪くない。
覚えていないだけだ。

でも私は、監視している。

冷蔵庫の音に反応し、
引き出しの気配に耳を澄ます。

食事は、本来、楽しみのはずだった。

それが、管理になった。

食べ続ける祖母と、止める私。
私はだんだん優しくなくなっていった。


この記事は「なめていた私のダブルケア」第3話です。

◀第2話
2|利点しかないと思っていた同居

第4話▶ 
4|新築でも、安心は手に入らなかった

シリーズ一覧はこちら
なめていた私のダブルケア